FAQ
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<Q11 筋肉の石灰化の原因は? > |
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石灰化とは、カルシウムが沈着する現象
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筋肉は石灰化することがあり、それは、それほど珍しい現象ではないようです。
後縦靭帯骨化症は、脊柱を支えている靭帯が骨化する病気です。かつて頚椎症で治療したことのある患者さんは、肩の筋肉の中に、カルシウムの塊が発見されました。石灰沈着するタイプの劇症の五十肩もあります。
腱鞘炎で来院した女性(Mさん)の前腕に、カルシウムの塊ができていたという症例もあります。13年経って、当時を振り返ってみると、Mさんの症例から、二通りの仮説が考えられることがわかりました。 |
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〔仮説・1〕石灰化は血行不良が原因である
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Mさんの前腕が痛くなり始めたのは年末だそうです。最初に撮ったレントゲンでは異常なしでした。まだカルシウムの塊はなかったようですが、写す角度の関係で、骨に隠れていて見えなかったという可能性はあります。
私が鍼灸治療を依頼された頃は、ちょうど発症から1ヶ月くらいたっていました。その頃には、肩から腕までパンパンに腫れて、腕を動かすことはもちろんのこと、じっとしていても痛い、首も回せない状態で、痛み止めも睡眠薬も効かない激痛に、常時悩まされていました。
血液のうっ滞によって、カルシウムの沈着が起こった、というのが仮説・その1です。 |
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「乳酸」がカルシウムを引き寄せる?
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炎症が起こると、炎症反応として滲出液がでます。リンパ球(液)が治療のために駆けつけます。静脈が圧迫されると、いらなくなった体液や血液の排出がうまく行かなくなります。そこに動脈血が心臓から送られてきます。行くこともできず、戻ることもできず、大量の体液の貯留がおこり、ますますパンパンに腫れてきます。
筋肉は活動の老廃物として乳酸をだします。乳酸は酸性なので、アルカリ性であるカルシウムが集まってきて、時に、沈着してしまう、という可能性が考えられます。
筋肉の中には血管が通っています。筋肉が硬くなると、血管が圧迫され、血の巡りが悪くなり、老廃物の排泄が阻害され、ますます筋肉が硬くなる、という悪循環がおこります。
気血の流れは、さらさら流れる小川のようなものです。小川に、小枝が一本でも引っかかると、そこに、葉っぱやゴミや土などが、次々に引っかかり、どんどん大きくなります。
初めはちっぽけな滞りでも、場所とタイミングによっては、大きな変化を起こすこともあります。 |
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石灰化は不可逆的変性
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鍼灸開始後、すぐに撮ったMRIでは、「肘の関節包に溜まっている水と同じものが肘の下のほうにも溜まっている」と言われたそうです。すでにカルシウムの塊が存在していたとしても、大量の水が溜まっていたために、見えにくくて発見できなかったという可能性があります。レントゲンやMRIでは、場所の特定ができないと、何十枚撮っても写真に写らないということもあるのです。
鍼灸をして、腫れも引き、「痛みはないけれど、この塊に引っかかって曲げられない」という状態になりました。治療開始後2ヶ月半目に撮ったレントゲンで、前腕のカルシウムの塊が、くっきり鮮やかに写っていたそうです。首・肩・腕を20枚ぐらい撮ったそうですが、今考えると、塊のある場所がはっきりしていたのだから、そんなに撮らなくともよかったのでは?と思うのですが。
当時、どんなにがんばっても、鍼灸でカルシウムの塊を消失させることはできませんでした。 |
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〔仮説・2〕血行不良とは別の原因の可能性
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最初のレントゲンで見つからなかったのは、まだカルシウムの塊がなかったか、あってもごく小さいものだった、とも考えられます。MRIを撮った時にも、まだできていなかった。水溜りが写っていた理由は、目に見えないほどの小さな、カルシウムの芽のようなものがあって、そのため、滲出液が出ていたからだというのが、仮説・その2です。
ということは、鍼灸によって、体液の排出が行われ、腫れが引き、痛みが取れていく過程でも、カルシウムの沈着が進んでいた、ということになります。私の腕が未熟なために、鍼灸治療の効果がなかったという可能性はさておいて、組織がすでに不可逆的変性を起こしていて、石灰化を止められなかった、ということになります。 |
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石灰化する前に、早めの治療を
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ここに書いたのは、患者さんの質問に答えるというより、私の仮説、私の疑問です。皆さんも考えてみましょう。
私としては、治療するに当たって、「パンパンに腫れている腕の腫れを取り去っていったら、そこに塊を発見した」という感じだったのですが、症例を見直してみて、あれれ?と疑問が生じて、あれこれ考察してみました。
どちらの場合でも、もしかしたら、カルシウムの塊ができるのは、あっという間だったという可能性もあります。
鍼灸師として言えるのは、石灰化(骨化)したら手に負えない、筋肉が「肉」のうちに治療に来てください・・・ですね。
このテーマは、FAQ 12 「石灰化の対策と治療」 につづきます。 |
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